VAMPIRE:the masquerade(ヴァンパイア・ザ・マスカレード。以下V:tm)解説
V:tmは今から十年以上前、アメリカのホワイトウルフ社から発売されたゲームで、そのダークかつ異色のテーマから熱狂的なファンがつき、今でもサプリメントなどの展開がなされています。日本語訳版は2000年夏に出ました。
基本的にプレイヤーはみんなヴァンパイアを演じます。この世界のヴァンパイアは映画等に見られるヴァンパイアとおおむね同じです。日光を浴びると死ぬし、人を噛んで血をすすり、不思議なパワーも持っています。ただし十字架は怖がりません。
ヴァンパイアに噛まれた人の全てがヴァンパイアになるわけではありません。血を全部吸われて死亡したあと、吸血鬼の血を少量飲まされた者だけが不死者として再生します。この過程の事を抱擁(Embrace)といいます。
ヴァンパイアの世界にはその他にもいくつかの専門用語があります。
父とは自分をヴァンパイアにしたヴァンパイアの事。
継嗣とは自分がヴァンパイアにしたヴァンパイアの事です。
最初のヴァンパイアは、弟アベルを殺して追放された最初の殺人者カインだといわれています。カインの子孫たちは、その数を増やしながら全世界に散らばり、近親集団である氏族(Clan)を構成しました。氏族は13個あり、カインの孫(もしくはひ孫)にあたる第三世代が作り出したといわれています。吸血鬼たちはこの氏族名と、自分がカインから何代目にあたるかという「世代」で、自分の位置付けを表すことができます。すなわち、○○氏族の第○世代、というように。当然古い世代のヴァンパイアの方が数が少なく、その分強力です。世代によってそのヴァンパイアの各がどのくらいかもわかります。しかしヴァンパイアに世代を聞くのはとても無礼な行為とされています。
第三世代……アンテディルヴィアン(前洪水者。ノアの大洪水の前から生きていたから)と呼ばれる。最初の13人。彼らより前の世代の者は全滅している。彼らのうち何人かは、すでに滅びたといわれている。
第四、五世代……メトセラと呼ばれる。何千年も生きており、神のように強大。
第六、七、八世代……長老と呼ばれる。
第九、十世代……若輩と呼ばれる。
第十一、十二、十三世代……いわゆる下っ端。
なお、こうした世代によるラインは厳密なものではありません。ヴァンパイアの世界は基本的に実力主義です。
派閥と抗争
13の氏族は、いくつかの派閥に分かれ、太古の昔から争いつづけてきました。無論、派閥内での内輪もめも同じくらい昔から続いてきました。十三氏族のうちヴェントルー、トレアドール、トレメール、ノスフェラトゥ、ギャンレル、ブルハー、マルカヴィアンの七氏族はカマリリャと呼ばれる派閥に、ラソンブラ、ツィミーシィの二氏族はサバトという派閥に属しています。残りのアサマイト、セタイト、ジョヴァンニ、ラヴノスの四氏族はそれぞれ独立勢力として活動しています。
カマリリャ
最大の派閥です。人間から身を隠す仮面舞踏会の掟など六か条の掟を守っています。彼らを決して善良などとは考えないでください。ただハイソに上品に装うのが上手いだけです。ヴァンパイアの世界は血みどろの権力闘争なのです。なおカマリリャのヴァンパイアは自分たちヴァンパイアを血族と呼びます。
カマリリャは地方自治色の強い貴族連合体といったスタイルの組織です。各地のヴァンパイアを統率するリーダー(これを公子という)が加盟しています。
ヴェントルー……洗練された様式を持つ貴族の氏族。指導者の才があり、カマリリャの高官や各地の公子のほとんどはヴェントルーである。血のえり好みがうるさい。
トレアドール……美を愛し、美に生きるスタイリストの氏族。おおむね美形ぞろい。弱点は、美しいものを見ると我を忘れてしまう事。
トレメール……陰険で秘密主義な魔法使いの氏族。もとはただの人間の魔術師だった創始者が、サルブリという氏族を滅ぼして成り代わった。他の氏族からの評価は最低。
ノスフェラトゥ……見るもおぞましい容貌をした怪物的な氏族。見てくれの割に情報通である。
ギャンレル……野性的で、都会よりも荒野を好むワイルドな氏族。狂乱に陥る(後述)と後遺症として猫耳やらしっぽやらが発生してしまう。
ブルハー……暴力的かつ理想を追い求める哲人の氏族。もっとも今はただのヤンキー集団に近い。弱点は怒りっぽく、狂乱に陥りやすい事。
マルカヴィアン……メンバー全員頭がおかしい狂人の氏族。未来予知などの才もある。でもキ●ガイ。
上で述べたのは、その氏族のステレオタイプです。もちろん当てはまらないキャラも存在します。
サバト
サバトは暴力的かつ背徳的な組織です。彼らに比べれば確かにカマリリャの方がまだナンボか善良です。無論、悪には悪の美学や理論がありますが…。サバトは自分たちをカイン人と呼んでいます。
ラソンブラ……ヴェントルーと対極をなす、背徳貴族の氏族。闇を操る力があり、鏡に姿が映らない。
ツィミーシィ……極端に科学的かつ非人間的な氏族。常に怪しい研究に従事しており、ヴァンパイアを超えた何かになろうとしている。故郷の土を常に必要としている。
サバトにはカマリリャの氏族からの逸脱者も多数参加しています。こうした亡命氏族の事を反氏族と呼びます。
独立勢力
どちらの味方でもありません。
アサマイト……他のヴァンパイアを狩る暗殺者の氏族。若干忍者風。代償次第で雇われ仕事もする。同族喰らい(後述)で、ヴァンパイアの血中毒。
セタイト……エジプトの邪神セトをあがめている、宗教氏族。他の存在を堕落させるのが自らの務めと考えている。光にメチャクチャ弱い。
ジョヴァンニ……死霊やゾンビを操るのが得意な心霊術師の氏族。豪商でもあり、非常にリッチである。噛まれると死ぬほど痛いので、なかなか餌が見つからないという弱点あり。
ラヴノス……ジプシーの出身で、ペテンやいたずらが大好きな詐欺師の氏族。ただし無邪気さとはほど遠い。「悪いこと」中毒者である。
都市の役職
ヴァンパイアはナワバリ意識の強い生物です。現代のように大都市に多数の人間とヴァンパイアが溢れる時代では、「餌場における序列」が必要不可欠なものとなりました。
カマリリャの役職
公子……都市の支配者です。人間社会を陰で操ってもいます。公子だけが自由に継嗣を作る権利を持っています。
家令……公子補佐です。公子にもしもの事があったら代わりになります。
参議……その都市における氏族の代表者です。当然、複数います。
警吏……都市を見回る保安官です。
鎮守……国境を見守ったり、公子の勅命を遂行したりする私兵です。
エリュシオン守護人……都市の非武装中立地帯であるエリュシオンを管理する役人です。
彼らは常に足をひっぱりあっています。
サバトの役職
摂政……全サバトのリーダーです。カマリリャにはこうした強権的リーダーは存在しません。
大司教……公子のサバト版です。若干宗教的な役割も果たします。
司教……参議のサバト版です。特定の氏族を代表するわけではありません。
聖堂騎士……幹部の護衛や勅命の遂行にあたります。
督使……一味(Pack)のリーダーです。一味はサバト独特の制度で、気のあった者同士が組むパーティーのようなものです。
司祭……一味の精神的指導者で、カウンセラーです。
「獣」と狂乱
どんな温厚なヴァンパイアも、心の中に「獣」と呼ばれる暴力的かつ本能的な存在を飼っています。激しい怒りや悲しみ、ショック、そして飢えなどを感じると、この「獣」が抑制を破って表面に現われ、一時的にヴァンパイアの精神を乗っ取ってしまいます。こうした状態を狂乱に陥るといい、こうなってしまうと最初に感じた欲求を遂げるまでは正気に戻りません。
人間性と啓発の道
陰謀や殺し合い、そして吸血による殺人が日常的なヴァンパイアは、どうしてもモラルを失いがちです。V:tmではキャラクターのモラルがパラメータの一つとして十段階評価で表されています。一般人を7とすると、ヴァンパイアはおおむね4〜6といった低い範囲に留まりがちです。もちろん高い人間性を保った高潔なヴァンパイアも存在します。
はっきり言ってモラルが低い方が生きやすいのがヴァンパイアの世界です、しかし、人間性が0になると「獣」に魂を(永遠に!)乗っ取られてしまいます。そこで一部の非人間的なヴァンパイアは人間性の代わりの新たな道徳、啓発の道を信奉しています。この傾向は特にサバトのヴァンパイアに顕著です。
訓え
ヴァンパイアが持つ魔法的な力の事です。人を魅惑したり操ったりする《威厳》や《支配》、怪力をもたらす《剛力》、高速で動く《瞬速》などが代表的な訓えです。
その他設定
血の契り
あるヴァンパイアの血を三回飲むと、そのヴァンパイアに強い恋情を抱くようになります。この絆は非常に強固であり、他者を服従させるためや、心変わりを恐れるヴァンパイアの恋人たちが用います。
吸血の快楽
ヴァンパイアが首筋に牙を埋め、血を吸うという行為は、犠牲者に強烈な性的快感をもたらします。ほとんどの犠牲者が抵抗できないのはそのためです。反面、ヴァンパイアのほとんどは性行為とは無縁です。
グール
ヴァンパイアの血を定期的に摂取している人間の事。年をとりません。無論、血の契りは結ばれてしまうし、長年やっていると体質的にも悪影響が出てくるようです。
より詳しい情報をお求めの場合は下記のサイトをご覧ください。解説が丁寧です。
http://www006.upp.so-net.ne.jp/stormgods/WoD/
http://www2s.biglobe.ne.jp/~iwasiman/foundation/wod.htm