その日、綱吉は入れ替わり立ち代わりの訪問を受けていた。
用件は皆同じで。
嬉しいことだが、こうもひっきりなしだと若干疲れもする。

そんなことを考えている間にも、執務室の扉がノックされた。

「どうぞ」
「邪魔するぜ!」

勢いよく扉を開いて入ってきたのは自分の兄弟子。
満面の笑みを浮かべた彼は持っていた花束を差し出しながら皆と同じ言葉を口にした。

「婚約、おめでとう!」
「ありがとうございます」

何度言われても嬉しいし恥ずかしい言葉。
それに本日何度目かもわからなくなった礼をする。



月日が経つのは早いもので、雲雀と別れてから四年の月日が流れていた。



その間にもなんだかんだと事件はあったが、晴れて無事に京子との婚約に踏み切れた。
それも皆の支えがあってこそだと思っている。

そう、目の前のこの人にも随分と助けられた。

「……って、あれ? ディーノさん、髪」

視界を遮る花束を避けるようにして確認すると、見間違いではなく髪形が変わっているのがわかる。
一番最後に見たときはよくぞここまで綺麗に伸ばしたと言える後ろ髪があったはずだが。

「あ、うん。切った」

さらっと言ったがそれは自分の婚約にも匹敵する出来事ではないのか。

ディーノが髪を伸ばしていた理由は知っている。
それこそがこれまで自分の心が救われてきた事実であって。

「お、おめでとうございます!」
「あんがとな!」

三十路過ぎとは思えない子供みたいな笑顔。
それにうっかり涙まで浮かんでしまった。

「おいおい、ツナ……」
「す、すみません。……でも」

本当に嬉しくて仕方がなかった。
自分が傷つけてしまったあの人。
それを癒し、支えてくれたのはディーノだ。

彼が居てくれたからこそ、自分は迷わず真っ直ぐに京子を見つめることが出来た。

その彼が幸せになることが嬉しくないはずない。
そして、あの人にも安らぎが訪れたのだとわかったのもこれ以上ない喜びで。

嗚咽すら漏れそうになって慌てて口元を手で押さえた。

「そこまで感極まるなって」

笑ってぽんぽんと頭を叩く手にも余計に泣きそうになる。

「ディーノ……さん……」
「ツナ。お互い、幸せになろーな」
「……っ! ……はいっ!!」

止まらない涙を必死で堪えながら笑みを返すと、ディーノが満足そうに笑みを浮かべる……のと同時に開かれる扉。

ノックも何もなく開かれた扉の向こうにはなんとも読めない表情をした雲雀が立っていた。

「うお、びっくりした」
「ああ、居たの」

驚いて振り向いたディーノを一瞥して、雲雀は綱吉に歩み寄る。
これは本当に上手くいったのかこの二人……とも考えてしまうやり取りにどんな顔をしていいのかわからず、綱吉はとりあえず驚きに止まった涙だけはしっかり拭った。

「なに泣かされてるの」
「あ、いえ、これは……」
「どうせ、余計なこといったんだろうけど」

余計なことって何だという突っ込みは華麗にスルーして雲雀は綱吉の瞳を覗き込む。

「綱吉」
「は、はい!」

思わず緊張してしまって、背筋を伸ばすと目の前の無表情がふわりと綻んだ。

「婚約、おめでとう。よかったね」

それはとてもとても綺麗な笑顔で。

何も憂えうこともなく受け止めることが出来た言葉は、あの日の数倍胸に響いた。









「泣きすぎなんじゃないかな、あれは」
「まあ、そう言うなって」

あの後、完全に涙腺が崩壊したらしい綱吉は、乱入してきたリボーンに蹴倒されるまで泣き続けた。
大マフィアのボスがあれでいいのかと漏らす雲雀に、ディーノは大らかに笑う。

「あれだからいいんだろ」
「……あなたも結構泣き虫だし。ボスって頼りない方がいいのかな」

今や実質同盟第二位とまで言われるキャバッローネのボスもいい加減ヘタレだ。
こんなことでいいのだろうかという疑問は当然のものだろう。

「お、オレは泣き虫じゃないぞ!」
「髪切っていいって言ったら大泣きしたじゃない」
「そこは仕方なくね?」

なにせ、なんだかんだで四年もかかったのだから。
最初から合わせれば十年越しだ。

「……じゃあ、もう泣かない?」
「よっぽどのことがなきゃな」
「なら、言うけど」

妖艶に笑んだ雲雀の口から出たのは衝撃の真実。

「実は、もうだいぶ前から切ってよかったんだけど……もったいなくって言えなかった」
「ちょっ!!」

ディーノの長い髪を雲雀が気に入っていたのは知っていた。
知ってはいたが……。

「泣かないよね?」
「……おう」

楽しげな姿に心で泣く。
この涙も幸せの一つだと己に言い聞かせてディーノは雲雀をそっと抱き寄せた。





Fine







しゅーりょーっ!

ここまで読んでいただきありがとうございました。
数年ぶりの文章であわあわしながら書きましたがなんとか書き上げられました。

ディノヒバにはまってからというもの、怒涛のように押し寄せる妄想に絵では対処しきれなくなり、結局文章に走る自分。
この話も最初は漫画で描こうとしてたってのは無謀な真実。
まあ、当初はもっと軽いノリだったんです。
ツナに振られたけどディーノが居るからいいよ的な。
どこをどうしてこうなった……。

京子ちゃんを書けてとても楽しかったです。
実は雲雀→ディノツナ←京子バージョンもあるのでそれもいつか書きたいと思いつつ。
でも、そっちはディーノが完全にダメな人だからどうしようかとも思いつつ。

と、リボーンで初めて書き上げた話なのでつらつらとあとがきなんぞ書いてしまいました。

今後ももそもそといろんな話を書けたらと考えておりますので、もしよろしければお付き合いいただけたら嬉しいです。





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