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綱吉と別れてからちょうど一週間。 突然の守護者集合命令を受けてボンゴレ並盛仮アジトに向かう。 他の守護者ならいざ知らず。 雲雀には今回の集合の意味がわからないわけがなかった。 「おや、いつにもまして面倒くさそうな」 「……面倒なんじゃなくて、君の顔を見て不機嫌になったんだよ」 集合場所である執務室に向かう途中で嫌な顔に出くわして遠慮なく眉を寄せる。 そんな雲雀に骸は大げさに肩を竦めて見せた。 「相変わらずですね」 「今日は、君なの?」 「いえ。クロームも一緒ですよ」 現在のボンゴレの霧は二人いる。 綱吉としても、おそらく他の面々としてもクロームの方を正式に守護者にしておきたいのであるが、ボンゴレリングから変形したギアの持ち主が骸となってしまっている以上そうもいかず。 元々が二人合わせてという形でもあったため変則的な状態になっているのだ。 ただ、それでも。 雲雀以上に骸はボンゴレにはっきり属しているとは言いがたい存在のために基本的にはクロームが守護者として現れる。 骸が守護者として現れるのはよほどの時だけだ。 そして、その時はクロームは現れない。 もっとも、骸は個人的にふざけてしょっちゅう顔を出すわけだが。 ともあれ、守護者集合という形であるのに二人ともとなれば用件は確定したようなものだろう。 「……まあ、わかってたことだけど」 「何がですか?」 「独り言に話しかけないでくれる?」 更に言うとついてこないで欲しい。 そう視線にこめると骸は困ったように笑った。 「目的地が同じなんですから、そこは勘弁してください」 ああ、咬み殺したい。 そんな風に思うものの手が出なくなってしまったあたり、すっかり馴れ合ってしまっている。 姿を見れば殺したいくらいに思っていたあの頃が懐かしい。 「僕、本当に丸くなったな……」 「頭の形は元から丸いですよね」 「パイナップルは黙ってろ」 やっぱり咬み殺そう。 そう考えた時にちょうど目的地についてしまった。 そこまで来てしまえば、骸のことなどすっかり頭から抜け落ちて。 扉をノックする前に小さく息を吐いた。 その際、何か言いたそうにした骸は放っておいて目の前の扉を軽く叩く。 「どうぞ」 部屋の主の声がしたのを確認してノブに手をかけると雲雀は一気に押し開いた。 「僕達が最後だったみたいだね」 視界に入ってきたのは執務机の向こうで鎮座する綱吉と、来客用ソファや部屋の隅など各々の場所を確保している他の守護者達。 「はい。これで全員です」 穏やかな笑みを称えた綱吉。 何があったのだろうと訝しむ守護者達……マイナス1。 一人、しかめ面をしてそっぽを向いている了平は先に事情を理解しているのだろう。 「10代目。今回はいったいどんなご用件で……?」 今までずっと聞きたくてうずうずしていたらしい獄寺が口火を切る。 その問いと共に自然と皆の視線が綱吉に集まった。 「うん、それは……物凄く個人的なことで申し訳ないんだけど」 一旦区切り、僅かに視線を雲雀に向ける。 その視線に雲雀が微笑むと綱吉は少し泣きそうな表情をした。 「オレ、京子ちゃんと正式に付き合うことになったんだ」 「え、10代目? だって……」 綱吉の告白に今度は雲雀に視線が集まる。 「ちょっと人のことそんなにじろじろ見ないでくれる?」 「って、言ってもさ、ヒバリ。この場合仕方ないんじゃないか?」 不機嫌を顕にした雲雀に、ソファの背に座っていた山本が苦笑を漏らした。 「ツナ、ヒバリと話は?」 「ちゃんとしてあるよ」 雲雀に聞くよりも確実であろうと綱吉に問いかける山本。 それに綱吉はしっかりと頷きながら答える。 「しないわけ、ない」 「だよな」 納得したのは山本だけではなく。 その場の全員がそこへ対しての追求を終わらせようと決めたのがわかって雲雀は僅かに表情を綻ばせた。 仲間だからとかなんだとかは苛々するがこういった心遣いは悪くない。 ただ唯一真横から感じる不穏な空気だけは非常にイラついたが。 「それで、10代目。こうして守護者を集めた理由とは?」 「だから、個人的なことで申し訳ないって言ったじゃん」 獄寺の問いに綱吉は本当に申し訳なさそうに身を縮める。 「皆にはちゃんとわかっていて欲しくてさ」 雲雀の事も、京子の事も。 「一人一人説明するのも難だしと思って」 「それだけじゃないでしょう? 沢田綱吉」 綱吉の説明を遮るように骸が割り込むとまた視線の移動が行われる。 雲雀の真横に集まった視線に、受けた本人は呆れたように小さくため息を吐いた。 「晴れの守護者の妹とはいえ、彼女は一般人だ。今までもボンゴレには何かと関わってきたが正式に君と付き合うとなると話は変わる」 骸の指摘に綱吉の表情がすっと真剣なものに変わる。 額に炎を灯している時と同じような目つきになったのに守護者達の空気が張り詰めた。 「その通りだよ、骸」 おそらく、綱吉と京子のことは対外的に秘めやかにしていくことはできないだろう。 そうなれば彼女に危険が及ぶ可能性は格段に増える。 「彼女を守るのはオレの役目だと思っている。でも、それに拘っていたら危険なのも確かなんだ」 だから。 「皆、お願いだ。オレの力及ばない部分をどうか助けて欲しい」 立ち上がり深く頭を下げる。 綱吉のその姿に皆一瞬目を見開き、そして笑みを零した。 「当然です! 10代目!! 10代目の未来の花嫁なんです。守って見せますよ!」 「ちょちょちょちょ。獄寺くん、話が飛びすぎ……」 「そうだぞ、タコヘッド!! まだ、そこまで話は進んでないっ!!」 「あはは〜。やっぱり笹川兄は怒ってたのな〜」 「これじゃ、京子さんも大変だなぁ〜」 「言われなくても……ボスが関係なくても京子ちゃんは守るよ」 「僕は……関係ないって言ってかまわないですかねぇ」 綱吉の願いに対して返ってきたのはいつもの調子の皆の反応。 それはその願いはボスの命令だから叶えるのではなく、自然の中のことなのだと伝えてきていて。 皆の温かさに涙ぐんだ綱吉はただ一人何の言葉も発さなかった雲雀に視線を向けた。 雲雀はただ静かに綱吉を見つめていて、視線が絡み合う。 それを断ち切るように目を伏せた雲雀はゆっくりと綱吉に向かって歩み寄った。 「ヒバリ……さん」 「おめでとう、綱吉。……幸せに、なりなよ。僕は僕で勝手にやるから」 間近で囁くとニヤリと口の端をあげる。 そう、それこそこれまでと変わりのない、いつもの雲雀の笑みを見せて。 「これで、用件は終わりだよね? 僕はちょっと外すよ」 どこまでも自然な仕草で雲雀はくるりと踵を返した。 その背に綱吉は無言で頭を下げる。 雲雀が部屋を出て行くその時まで余計な口を挟むものは誰一人としていなかった。 |