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今日、この日まで自分がこんなにモテるとは思っていなかった。 女にだけならそれなりに自覚はしていたが。 まさか、こんな事態になっているとは露知らず。 昨日の衝撃が抜けきらないうちに己に襲い掛かった事実にディーノは眩暈すら覚えた。 若干逃げ出したい気持ちもありつつ、ここで逃げたら男が廃るとばかりに出向いた並中。 校門を過ぎて少しのところで応接室に向かうか悩んでいる最中に出会った弟弟子とその仲間が事件の皮切りだった。 「よう、ツナ……」 「でぃ、ディーノさん! 雲雀さんに告白されたって本当ですかっ!?」 「ゴホッ! ……だ、誰に……」 耳に入るには早すぎる気がするのにあからさまに動揺してしまう。 雲雀がそんなことを吹聴して回るとは思えないだけに、周りからのツッコミには何の警戒もしていなかった。 「骸が言ってたのなー。しっかし、やりかねないとは思ってたけど本当に抜け駆けするなんてな」 「は?」 いつもと変わらぬ明朗な笑顔でディーノの疑問に答える山本。 その中にあった台詞に思わず抜けた声が出た。 「抜け……?」 「まあ、そういうことっすよ。なー、ツナ」 「え、あ……う、うん」 笑ってはいるものの瞳の奥になんだか少し怖い感じがする光を湛えた山本と、顔を赤らめて俯きながらもちらちらと自分に向かって視線を送ってくる綱吉に、昨日覚えたばかりの衝撃が再び襲ってくる。 彼らに関しては好意自体は感じていたが……まさか、それもそうだったのかと思うと目の前がくらくらする。 自分はそんなにも鈍かったのかと感じたところで真後ろに妙な気配。 「うぉっ!」 「そんなに大げさに避けなくてもいいんじゃないですか?」 敵意が無かったとは言え、そこにいることに全く気がつかなかっただけに驚いて一気に距離を離すと、噂の元凶らしい骸は不機嫌そうな声を出した。 「もっと普通に近づけよ!」 「ああ、すみません。少しでも近くにと思ってたらつい」 「…………」 お前もかと叫びたい気分だった。 綱吉達ならいざ知らず。 なんで骸にまで……と思わずにはいられない。 確かに実体で現れるようになって以降、なんだかんだ言っても綱吉のファミリーであることは間違いないし、色々言ってはいてもまだ子供なのだからとそれなりに構ってはいたが。 「…………お前ら、マジかよぉ」 ついに頭を抱えて座り込んでしまう。 そこへ鳴り響く携帯の着信音。 「Pronto?」 『う゛お゛おぉい! 跳ね馬ぁっ!』 「す、スクアーロ!?」 このタイミングでどうして彼が電話をかけてくるのかわからずただひたすらに驚く。 そんなこちらのことなどお構いなしに電話の先の相手は捲くし立てた。 『わざわざ日本まで行ってガキに手ぇ出してんじゃねぇぞ!!』 「だ、出してねぇっ! てか、何でお前まで知ってんだよぉぉぉ!!」 ディーノの叫びに骸がクフフと笑う。 一瞬で謎が解けてディーノはそのまま突っ伏してしまいたい気分になった。 『くだらねぇ犯罪やってんじゃねぇぞぉ!!』 「犯罪って言うなー!」 ディーノの反論は届くことなく通話を切られる。 「なんなんだよ……あいつ……」 「また素直じゃない牽制でしたね」 「え、あれもそうなの!?」 さも可笑しそうに言った骸につい聞き返すとニヤニヤしながら頷かれた。 「マジでどーなってんだこれ……」 悪い夢かと思わずにはいられない。 夢ならいっそ覚めてくれ。 皆のことは嫌いではないからこそ、今の状況はどうにもきつかった。 「……なあ、跳ね馬」 「なんだよ、スモーキンボム」 これまでずっと沈黙を保っていた獄寺がそっと近づいてくる。 「オレは……違うからな?」 一緒にされてはたまらないとばかりに自己申告してくる彼がむしろ今は一番愛しくて。 「スモーキンボム〜っ!!」 「おいぃぃぃっ!!」 つい抱きついたら心底嫌そうな声を上げられるのが、何故か無駄に嬉しかった。 「ねぇ、君たち。いい加減群れるの止めてくれない? それから、そんなところで騒いでると他の生徒に迷惑だから」 ディーノが獄寺に抱きついたことでざわめいた空気の中、それを引き裂くように大量の冷気を放った存在が近づいてくる。 いわずともがな。 最凶の風紀委員長雲雀だ。 「咬み殺すよ」 お決まりの台詞を言いながら獄寺からディーノを引っぺがす。 そうして、さり気なく自分の後ろに隠すとトンファーを構えた。 それに対して一歩も引く様子を見せず、むしろ応戦体勢に入る面々。 「……えっと」 状況に一番疑問を覚えたのはディーノで。 「あのさ……せめて、場所変えね?」 今までも充分に見世物だったとは思うが、ここまであからさまに自分争奪戦の色が濃くなってくるとさすがに恥ずかしい。 そんなディーノの提案に素早く反応したのは雲雀だった。 「いいよ。じゃあ、行こうか」 何の迷いも無くディーノの手をとるとすたすたと歩き出す。 出遅れた他の面々を引き離すように早足で歩く雲雀は一旦は応接室に向かっていたものの、後ろがしっかりついて来たことを確認すると、忌々しそうにしながら屋上に足を向けた。 「な、なあ。恭弥」 「なに?」 「昨日、お前、オレがモテるみたいなこと言ってたよな」 雲雀に手を引かれた状態のまま歩いていたディーノはふと思い出したことを口にする。 それに雲雀は淡々とした調子で答えた。 「言ったよ」 「じゃあ、お前、あいつらのこと知ってたのか?」 「知ってたよ」 「そ、そっか……」 雲雀ですら気がついていたと言うことはどれだけ自分は鈍かったのだろうと思う。 「ねえ、跳ね馬」 「ん?」 己の鈍さに気恥ずかしさを感じているディーノに今度は雲雀から声がかけられる。 それに反応を見せると雲雀は真っ直ぐ前を向いたまま言葉を続けた。 「僕と彼らを一緒にしないでね」 自分だけは特別だとでも言いたげな主張。 子供染みたそれがなんだかかわいく感じて。 自分の中でも雲雀は他とは違うのかもしれないなんて思ってみた。 |