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屋上に移動してから後。 当然のように話がまとまることなどなく、修羅場というより最早混沌としか言いようの無い状態になってしまった状況に何とか区切りをつけ、ディーノは半分逃げ出すようにして帰路についた。 「マジで一体なんだってんだよ。オレが悪いのか?」 ロマーリオが運転する車の中で痛む頭を押さえる。 確かにわざわざ嫌われるようなことはしてはいなかったが、だからといって特別に好かれるようにしていたつもりもない。 自分としては極普通に皆に接していただけなのにどうしてこんなことになってしまったのだろうか。 「恭弥だけでも大変な話だったのになぁ」 運転席に居るロマーリオもなんとも複雑そうな顔をしていた。 ボスに人徳があるのはいいことだが、これは何か違う。 ここまで人心惑わす存在であるのはむしろ問題なのではと感じてしまうのも致し方なかった。 「てか、ロマも気付いてなかったよな?」 「まあ……なあ。普通に慕われてるって思う方が自然だしな」 元々純粋な意味で人に慕われやすいからそこに上手く紛れてしまっていたと言うことだろう。 「恭弥に至っては慕ってるとも思わなかったけどな」 「ホントにな!」 苦笑を浮かべるロマーリオに、ディーノは心底同意する。 「もうちょっと慕ってくれてもいいんじゃねーかとか思ってた自分が馬鹿らしくなってくるぜ」 昨日の告白以降の態度の変化は凄まじいものがあると言わざるを得ない。 相変わらずあまり表情などには出てこないが、言動があからさまに違う。 「まさかあいつの背に隠される日が来るとは思わなかった……」 今日のあの姫ポジションは正直どうかと思った。 なんというか、もう、いろんな意味でお前ら自分をどうしたいのかと問いただしたいような問いただしたくないようなこの感覚。 「わー。マジであいつらどういうつもりなんだろ。考えたら怖くなってきた」 「考えんなよ」 「だってよぉ……。さすがにそーゆーつもりでこられたらいくら恭弥でも無理だよ、オレ」 「なんで恭弥だけ引き合いに出すんだよ。しかも、その言い方だと出方次第じゃ考えるみたいだぞ」 「うっ……」 冷静なツッコミに言葉が詰まる。 深く考えてした発言ではなかったが、そういう時ほど本音は出るものだろう。 「うー。なんつーか。あの中でもし可能性があるとしたら恭弥くらいかなぁって……」 「おいおい。昨日呑まれたそのまんまか?」 だから、流されるなと言ったのに……とぼやくロマーリオに首を横に振った。 「いや、そうじゃねって。オレだってちゃんと考えてるよ」 ただ闇雲に否定しても仕方が無いから、己の中の気持ちを見つめ返してみた。 そうして出た結論はやはり今のところはかわいい弟子でしかない。 けれども、彼に好意を寄せられて悪い気がしないのも事実なのだ。 「他の奴らはさ〜、困ったな〜としか思わないんだけどさ」 今日、他と比較して見ることが出来て尚更そう思った。 「アイツの場合、懐かないと思ってた猫が懐いて嬉しいみたいなとこもあるのかもしんねぇけど」 「ああ、その感覚はわかるな」 ディーノの例えにロマーリオは納得したように頷く。 「だろ? だから、まだ自分でもよくはわかんねぇんだけどよ。まあ、なんにせよ、このまんまってわけにはいかねぇよな……」 雲雀のことだけではなく色々な意味で。 「恭弥以外はさっさと振ってくればいいじゃねぇか」 「や、でも、そこで恭弥だけ残すってそれはそれで問題じゃね?」 一人だけ完全に特別扱いになってしまう。 そうしておいてやっぱり最後には駄目でしたなんてなったら、雲雀が可哀想過ぎる。 「……それもそうだな」 「それにちょっと振ったくらいじゃ諦めなさそうなのも居るしな」 屋上での騒ぎの中で、状況をこじらせた元凶は完全に把握できた。 あれはあらゆる意味で一筋縄でいく相手ではないだろう。 「あいつ、マジ怖い」 今のところ一番可能性がない相手ともいえるが、ふと気がついたらどうにかなっていたとかありそうなのが怖くて仕方ない。 「ボスなら大丈夫だと思うが、幻覚に惑わされんなよ?」 「おう、そこは任せとけ。むしろ、幻術使ってきてくれた方がまだ凌ぎようありそうだ」 戦いに近い力を使ってきてくれるのならば、まだまだ彼らくらいの年代に負ける気はしない。 そういった意味ではスクアーロが一番強敵だろうが、今回に限って言えば彼はかわいい方だろう。 「……てか、あいつもかぁ……。付き合い古いけど気付かなかった……」 そこに関しては少し悪い気すらした。 「古いって、スクアーロか?」 「ああ」 「……あれはわかってたぞ?」 「マジか!」 ロマーリオの発言にやっぱり自分は鈍いのかもしれないと感じずには居られなくなる。 「まー、でも、あれは……昔のボス見てるよなって気はするな」 「あいつの目にはまだオレあの状態なのかよ……」 「思い出は美化されるとかの類じゃねーか?」 初恋を引きずっているというか。 「昔はかわいかったからな」 「うるせ」 クツクツと笑うロマーリオに苦虫を噛み潰したような顔になってしまう。 今以上に女顔で体も小さくてへなちょこで……ともなれば、そう見る奴が居てもおかしくは無いのかもしれないと理解できてしまうのがまた複雑だ。 「あいつとは今度腹割って話そう」 「それがいい」 彼に関してはそれでなんとかなるだろう。 「問題はガキ共だな」 「あー、マジ、どーすっかなぁ」 余計な問題を増やさない為にも今回の在日中になんとかするべきではあるだろう。 「今夜は眠れなそうだな」 「……明日は特別なんもねーよな」 「急ぎの仕事が舞い込んでこなきゃ大丈夫だぜ」 今回は余裕を持って来ているからなんとかなるだろう。 「ああ、もう……。せっかく頑張って仕事終わらせてきたのに」 仕事以上に頭の痛いことに巻き込まれるとは思わなかった。 「オレには羽を伸ばす暇も与えられないのか」 「さっさとケリつけられればいんだけどな」 ロマーリオの言葉にまったくだと呻いて外を見やる。 いつの間にかオレンジに染まっていた街並みに思い出すのは昨日のことで。 やはり、そこが一番どうにかしなければならないところだなと感じた。 |