己の中に残った疑問が漠然としたまま日々は過ぎ。
医者から雲雀が待っているとの連絡を受けたディーノはなんとも言えぬ面持ちのまま出向くことになった。

すっかり通い慣れたボンゴレの医療施設。
初めは収容所のような部屋に隔離されていた雲雀も今では普通の病室を与えられている。
いや、普通とは言えないか。
ボンゴレの守護者に用意された部屋が質素なわけが無く。
場所も広さも装丁も特別扱いで。
人によってはこのままここに住みたいとすら考えるのではないかと思う。

それも今から向かう先に居る彼にとってはどうでもいいことだろうが。
むしろ、出れるなら一刻も早く外に出たいと思っているに違いない。

「ま、今日でどうにかなりそうだからな」

病室に向かう前に立ち寄った医者のもとで必要なものを受け取った。
医者曰く、そこに含まれる薬の量はもう殆ど無いも同然で、それこそディーノあたりにならそのまま使ってもなんの効き目もないくらいであるほどになったらしい。
次はもう何も入っていないゼリーだけで充分だと。

そう必然なのはここまで。
あとは雲雀が求めるかどうかの問題だけになった。

この先を決めるのは今日の様子次第。

「あいつは……どうするつもりなんだろう」

単純に考えれば、これまでと同じレベルの触れ合いで最低限必要な時だけの関係を続けていくのが理想だろう。
それはディーノにとって少しだけ苦しいけれど、全く触れられなくなるよりはいいし、なによりその程度ならばおそらく大きな問題は起きないといった状態。
ディーノの感情だけを除けば、一番最初に考えたのと同じ形。

彼に焦がれてしまって、そんなことはもう無理だと思っていた。
どうしても欲しいのに手を伸ばせないジレンマ。
そこからくる頭痛は酷いものだった。
けれど、それもたった一つのことで和らいだ。

彼が自分自身の心で自分を求めてくれているという事実。

あの柔らかな表情から伝わってきたその心に救われた。
自分の本当に望む形とは違うけれど、彼の心を向けてもらえた幸せ。

多少辛かろうともそれだけで自分は大丈夫だと思った。

だから、彼がどんな道を選ぼうとも反対するつもりはない。
もしかしたら、離れていってしまうかもしれないけれど、それはそれで仕方の無いことだと自分を納得させるしかない。

リボーンに揺さぶられてあれからまた悩むだけ悩んだ。
覚悟は決めてきたつもりだった。

「恭弥、入るぞ」

目的の部屋に辿り着き、軽くノックをした後に扉を開ける。
返事を待たなかったが自分が来るのはわかっているはずだし、鍵も掛かっていなかったので問題はないだろう。

案の定、開かれた扉の先にはさして気にした素振りもない雲雀の姿があって。
いつもと同じ寝巻き代わりの黒い着流し姿でベッドヘッドに上半身を預けた状態で座っていた彼は、ゆったりと視線を向けてきた。

「今日は早かったね」
「そろそろかなって思って予定空けてたんだよ」

とは口で言ってみたものの、実はここ最近のディーノは若干使い物にならず、腹心の計らいでいつでも動ける状態にさせてもらっていたというのが本当のところ。
だがしかし、そんなことは言う必要もない。

おあつらえ向きにベッドに居る雲雀に向かって歩み寄ったディーノは手を差し伸べる。
そっと頬を撫でると僅かに擦り寄ってくる姿がとても愛しかった。

「今日で治療は終わりだってさ」
「そう……」

それだけは先に伝えておくことにしたディーノに対し、雲雀はなんとも読めない表情で返事を返す。
おかげで途絶えてしまった会話に間が持たず、唇を寄せることで状況を打開した。

触れ合った唇は確かな弾力を持っていて。
初めて触れたときの痛々しいまでの薄さがなくなったことに安堵を覚える。

本当によくここまで快復してくれたと思う。
一歩間違えば死んでしまいそうだったあの時からすれば、それだけでも充分だと感じた。
彼を失うことに比べれば、今感じている苦しみなど他愛も無いことだ。

彼が愛しい。
許されるならば全て手に入れてしまいたい。
たとえそれが許されなくてもそう思う対象として存在しているだけでも幸せなのだと。

己に繰り返し言い聞かせながら触れると未だ起こる頭痛が引いていく気がした。

「……んっ、あ!」

舌を絡ませあいながら着物の隙間から差し入れた手で胸を弄る。
指の先に引っかかった取っ掛かりを軽く引っかくと雲雀の背が跳ねた。
その体を押さえ込むようにしながら徐々にずらさせる。
胸への刺激を与え続けながらそうすると、雲雀は体をくねらせながらベッドに横たわる体勢へと変わっていった。

「……は……ぁ……ん」

己の与える刺激にビクビクと震える体が愛しくてたまらない。
これが自分にだけ与えられる特権なのだと考えると腰の辺りが重くなるような気がした。

「……恭弥」

自分だけが彼に快楽を与えることが出来る。
それは決して精神的な意味ではなく、治療の副産物ではあるのだが、やはり特別と思わずには居られない。
勘違いしてしまいそうになるこの状況こそが己にとっての一番の大敵。

どれだけ頭で考えてきても。
どれだけ覚悟を決めたつもりで居ても。

やはり、いざここへくると己を抑え込むのに並ならぬ労力を要される。

だがしかし、それを表に出すわけにもいかず。
表情を読まれないためにも体をずらすと白い内股へと唇を寄せていった。

「……あ」

僅かに躊躇うような声。
薬の影響が抜けて見せるようになった羞恥。
ディーノの目の前で屹立する己を恥じるような姿にまた煽られそうになる。

「気持ちいいって思ってくれてる証拠だろ」

言って軽く口付けると髪をぎゅっと握られた。

「ちょっ……痛ぇって」
「余計なことは言わなくていい」

視線を上げると顔を横に向けて眉根を寄せるのがわかる。
その耳元は赤く色付いていてつい笑みがこぼれてしまう。
そんな、まるで普通に愛の営みをしているかのようなやり取りに幸せと共に苦しさも感じる。

「あっ! ……ん……や……」

沸き起こる感情を誤魔化すようにしながら雲雀の中心に舌を這わす。
性急になった動きに細い腰が蠢きだすのが艶かしかった。

「……あ、ぁ……跳……ね馬」
「ん。わかってる」

求める声にゼリーを取り出す。
雲雀に愛撫を与えながら器用に指先に塗りつけたそれをそろりと指を伸ばして後ろの蕾に擦り付ける。
びくりと大きく震えた体に反し、その場所は待ち望むように妖しく収縮した。

グッと力を入れると難なく沈んでいく指。
ゼリーの滑りもあり、簡単に二本に増やすことが出来た。

第二間接あたりまで差し込んで内壁を摩る。
腹側にある一番敏感な部分を見つけて強く押してやるとたまらないように内部が蠢いた。

「ん、ん……あ……ふ……あぁっ!」

これもまた薬の副産物の一つだろう。
未だ回数で言えばさして多くは無い経験にもかかわらず、雲雀はすっかり後ろへの刺激だけで感じ入ることが出来るようになっていた。
前への刺激は一旦止めたというのに、ビクビクと震えて快楽の証を零している。

解れた後孔は二本の指を余裕で引き離すことが出来るほどになっていて。
おそらくこのまま先へ進むことも可能だろうと感じた。

「っ!」

過ぎった考えを慌てて振り払う。
毎度この瞬間が一番堪えた。

「……跳ね……馬……?」

一瞬だが止まってしまった手に雲雀が疑問の声を投げかけてくる。
薬で朦朧とすることが無くなった分、気がつくだけの余裕が出てしまったのだろう。

「大丈夫だよ」

自分がしたがっているということだけは伝えてある。
そうしておいたのは正解だったと感じた。
我慢が出来るものだと伝えればそれだけですむのだから。

「お前が気持ちよければ、それでいいんだ」

内部に埋め込んだままの指はそのままに体を雲雀の上半身へと伸ばす。
そうして口付けると雲雀は伏せた睫を震わせた。






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